11月に台風が発生したと聞くと、「もう冬が近いのに?」と意外に感じますよね。2026年11月7日にも台風32号「チャンパカ」が発生しました。ただ、気象庁の統計を開くと、ニュースの印象とは少し違う数字が見えてきます。
11月の台風発生数は平年で2.2個。発生すること自体は珍しくありません。一方、日本への接近は平均0.5個で、上陸となると極めてまれです。実際、1990年11月30日には和歌山県へ上陸した台風がありました。
「発生」「接近」「上陸」を区別すると、11月の台風を正しく理解できます。過去の記録、発生する理由、日本への影響を順番に確かめましょう。
11月の台風は珍しい?平年値では2.2個発生する
台風は夏から秋に多いものの、11月で発生が終わるわけではありません。気象庁が公表する1991〜2020年の平年値では、11月の発生数は2.2個です。最盛期の8月は5.7個、9月は5.0個なので確かに少なくなりますが、毎年のように発生する時期と考えられます。
月別の台風発生数を比較
| 月 | 発生数の平年値 | 日本への接近数の平年値 |
|---|---|---|
| 7月 | 3.7個 | 2.1個 |
| 8月 | 5.7個 | 3.3個 |
| 9月 | 5.0個 | 3.3個 |
| 10月 | 3.4個 | 1.7個 |
| 11月 | 2.2個 | 0.5個 |
| 12月 | 1.0個 | 0.1個 |
| 年間 | 25.1個 | 11.7個 |
出典:気象庁「台風の平年値」。発生数は協定世界時(UTC)基準。接近は月をまたぐ場合があり、月別の合計と年間値は必ずしも一致しません。
この表で注目したいのは、11月の「発生2.2個」と「接近0.5個」の差です。台風は日本から遠い海上でも生まれます。国内のニュースで目立つのは日本への影響がある台風なので、発生数そのものが少ないように感じるのかもしれません。
12月や真冬にも台風は発生する
12月の発生数は平年1.0個、1月と2月はそれぞれ0.3個です。日本で雪が降る季節でも、北西太平洋の熱帯海域では台風が発生することがあります。台風には「この月以降は発生しない」という暦上の終了日はありません。
ただし、11月に2.2個という平均値は「毎年必ず2個以上発生する」という意味ではありません。年によってゼロのことも、複数発生することもあります。平年値は長期間の傾向をつかむための数字です。
過去の11月の台風発生数は?2024年・2025年の記録
近年の実績を見ても、11月の台風は例外的な出来事ではありません。気象庁の月別発生数統計では、2024年11月に4個、2025年11月に3個が発生しています。どちらも平年値2.2個を上回りました。
| 年 | 11月の発生数 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 2024年 | 4個 | 平年より多い |
| 2025年 | 3個 | 平年より多い |
| 2026年 | 11月7日時点で1個 | 月間確定値ではない |
出典:気象庁「台風の発生数」。2026年の値は11月7日時点の発生情報で、確定した月間発生数ではありません。
2026年の「32号」が珍しい理由
2026年11月7日12時、マリアナ諸島付近で台風32号「チャンパカ」が発生しました。発生時の中心気圧は1002ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は18メートル毎秒でした。ウェザーニュースの11月7日付報道によると、年間の台風番号が32号に達したのは1994年以来32年ぶりです。
ここでの「32年ぶり」は、11月に台風が発生したことではなく、年間の発生数が32個に達したことを指します。11月に32個発生したわけでも、日本に32個接近したわけでもありません。似た数字でも、何を数えているのかで意味が変わるんですね。
年間の発生数が多い年でも、日本への接近や被害が比例して増えるとは限りません。発生場所や進路が違えば、国内への影響も変わります。台風シーズン全体の見方は、関連記事の台風6号と2026年台風シーズンの傾向でも解説しています。
月末の発生記録は時間の基準にも注意
気象庁の月別発生数は協定世界時(UTC)で集計されています。日本標準時はUTCより9時間進んでいるため、月末・月初に発生した台風では「UTCでは10月、日本時間では11月」という違いが生じる場合があります。別々の資料を比較するときは、集計基準をそろえることが大切です。
11月に日本へ上陸した台風はある?1990年の台風28号
11月に台風が発生することと、日本に上陸することは別の話です。気象庁の平年値では、1991〜2020年の30年間に11月の上陸はありません。しかし、過去に一度もなかったわけではありません。
1990年11月30日、和歌山県白浜町付近に上陸
1990年の台風28号は、11月22日に台風となり、フィリピンの東海上で北東へ進路を変えました。11月30日14時ごろ、和歌山県白浜町付近に上陸。気象庁の1951年以降の統計で、最も遅い時期の上陸として知られています。
滋賀県がまとめた当時の災害資料によると、台風は上陸後に紀伊半島の東部を北東進し、同日18時には温帯低気圧となりました。滋賀県内でも風雨が強まり、土山では29〜30日の降水量が163ミリに達しています。滋賀県の1990年台風28号に関する資料(PDF)で確認できます。
「11月の上陸は極めて珍しい」は正しくても、「11月に上陸したことはない」は誤りです。30年間の平年値と、1951年からの長期記録を区別することが重要です。
発生・接近・上陸の定義を整理
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 発生 | 熱帯低気圧が台風の基準に達すること |
| 接近 | 台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300km以内に入ること |
| 上陸 | 台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸線に達すること |
気象庁では、小さな島や半島を横切って短時間で再び海に出る場合を「上陸」ではなく「通過」と扱います。沖縄や小笠原諸島に台風が近づいた場合も、ニュースの表現と統計上の「上陸」は必ずしも一致しません。
11月の日本への接近数は平均0.5個
11月の全国への接近数は平年0.5個で、8月・9月の各3.3個と比べると少なくなります。ただし、平均0.5個は「必ず2年に1回接近する」という意味ではありません。接近しない年も、複数接近する年もあります。
地域別では、11月の沖縄地方への接近数が0.3個、伊豆諸島・小笠原諸島も0.3個です。全国の平均だけで判断せず、南の島々では引き続き進路に注意したいところです。
なぜ11月でも台風が発生するのか?海と風の仕組み
日本の気温が下がっても、台風が生まれる海まで一斉に冷えるわけではありません。台風の発生を考えるときは、日本の季節よりも熱帯の海と大気の状態を見る必要があります。
暖かい海と水蒸気が台風を育てる
台風は、暖かい海から蒸発する水蒸気をもとに発達します。水蒸気が上昇して雲になる際に放出される熱が、周囲の空気の流れを強める重要なエネルギーです。一般に海面水温26〜27℃程度以上の海域が台風の発生・発達に適した条件として説明されます。
ただし、海が暖かければ必ず台風になるわけではありません。大気の湿り具合、上空と地表付近の風向・風速の差、低気圧周辺の空気の流れも関係します。海面水温だけで「今年は台風が多い」と断定できないのは、このためです。
11月の進路は偏西風や高気圧にも左右される
台風は周囲の大気の流れに運ばれて移動します。秋が深まると日本付近で偏西風の影響を受け、北上してきた台風が東寄りへ進路を変えることがあります。ただし、すべての11月の台風が同じ曲がり方をするわけではありません。太平洋高気圧の張り出しや上空の風の状態によって、進路は変わります。
また、北へ進んで冷たい空気の影響を受けると、台風が温帯低気圧へ変わる場合があります。「温帯低気圧に変わった」は「風雨の危険がなくなった」と同義ではありません。1990年の台風28号も、上陸後に温帯低気圧へ変わりながら風雨をもたらしました。
11月の台風で日本が注意したい影響と備え
上陸が少ない季節でも、台風が日本に影響しないとは限りません。特に小笠原諸島、沖縄・奄美、太平洋側の沿岸では、風や波の情報を確認する必要があります。
遠くの台風でも高波やうねりが届く
台風周辺で生まれた波は、台風の中心から離れた海域まで「うねり」として伝わることがあります。陸地では晴れていても、海岸や磯、防波堤では波が高くなる場合があるのです。釣りやサーフィン、船での移動を予定している人は、天気予報だけでなく波浪予報や運航情報も確認してください。
海岸に近づいてから波の様子を確かめるのでは遅いことがあります。高波や波浪警報・注意報が出ている場合は、危険な場所に近づかない判断が必要です。
予報円は「台風の大きさ」ではない
台風の進路図に描かれる予報円は、台風そのものの大きさを表すものではありません。気象庁では、予報円を「70%の確率で台風の中心が入ると予想される範囲」としています。円の外側なら影響がない、という意味でもありません。
進路予報を見る際は、暴風域・強風域、波浪情報、地域の警報・注意報も合わせて確認しましょう。数日前の進路図だけで予定を決めず、最新の発表を確認することが大切です。
風雨が強まる前に確認したいこと
台風の接近が予想される場合は、ベランダや庭の飛ばされやすい物を片づけ、排水口を点検し、スマートフォンやモバイルバッテリーを充電しておきましょう。自治体のハザードマップや避難先も、天候が悪化する前に確認しておくと安心です。
準備を順番に進めたい人には、台風接近前にやることチェックリストが役立ちます。家の周囲の点検、備蓄、停電対策、避難準備を具体的に整理した記事です。強風や大雨が始まってから屋外作業をすることは避けてください。
2026年11月の台風32号は日本に影響する?
2026年11月7日12時に発生した台風32号「チャンパカ」は、同日15時時点でマリアナ諸島付近を北西に進んでいました。中心気圧1002ヘクトパスカル、最大風速18メートル毎秒、最大瞬間風速25メートル毎秒と報じられています。
11月7日時点の予報では、日本の南で進路を東寄りに変え、翌週に小笠原諸島へ近づく可能性が示されていました。一方、本州付近へ直接近づく可能性は低い見通しでした。これは11月7日時点の予報であり、その後の進路や勢力を示すものではありません。現在の状況は気象庁の最新の台風情報で確認してください。
台風番号が32号に達したというニュースと、実際に日本で警戒が必要な地域は、分けて考える必要があります。発生数の多さだけでは、個々の台風の危険性は判断できません。
11月の台風についてよくある質問
11月に台風が発生するのは異常気象ですか?
発生したことだけでは異常気象とはいえません。11月の平年値は2.2個です。発生数が多い年の原因を考えるには、海面水温や大気の状態など、複数の要因を調べる必要があります。
11月に台風が日本へ上陸したことはありますか?
あります。1990年11月30日14時ごろ、台風28号が和歌山県白浜町付近に上陸しました。1951年以降の統計で最も遅い時期の上陸記録です。
12月や1月にも台風は発生しますか?
発生します。気象庁の平年値は12月が1.0個、1月が0.3個です。日本が冬でも、熱帯の海では台風の発生条件がそろうことがあります。
台風が上陸しなければ安全ですか?
いいえ。台風が離れていても、うねりや高波などの影響が及ぶことがあります。沿岸で活動する場合は波浪情報を確認してください。
まとめ|11月の発生は珍しくないが、上陸は極めてまれ
気象庁の統計では、11月の台風発生数は平均2.2個です。一方、日本への接近数は平均0.5個で、上陸は極めて珍しい現象です。ただし、1990年11月30日には台風28号が和歌山県に上陸した記録があります。
- 11月の台風発生数は平年2.2個で、発生そのものは珍しくない。
- 日本への接近数は平年0.5個。発生数とは別に考える。
- 1990年11月30日には台風28号が和歌山県白浜町付近へ上陸した。
- 12月や1月にも台風は発生し得る。
- 上陸しなくても、沿岸では高波やうねりに注意が必要。
台風のニュースでは「何号か」だけでなく、「どこで発生し、どこへ進み、どの地域に影響するか」を確認することが大切です。過去の統計で全体像をつかみ、具体的な行動は最新の気象情報に基づいて判断しましょう。
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参考資料・情報源
※平年値は1991〜2020年の30年間を対象としています。2026年の台風32号の進路見通しは2026年11月7日時点の情報であり、現在の予報を示すものではありません。
