東京オリンピックの中止論が出ていますが、それに伴い話題になっているのが五輪中止となればIOCに違約金を支払わねばならないという噂です。
東京オリンピックが決まった際に、IOCと東京都との間では開催都市契約というものが結ばれています。
そう、【契約】です。
【契約】をしたから、その【契約】を反故にする、つまり日本側からオリンピックを中止する「契約不履行」をすれば、当然なんらかのペナルティや違約金が発生するのではないか?という憶測がでました。
オリンピックの全てにおいての決定権はIOCにあります。
記憶に新しいのはマラソン競技の会場を東京から北海道に移したことでしょうか。
東京都側は東京都内で開催できるように準備してきました。
しかし、東京の夏の気温が高いことで選手の健康・身体を心配しIOCが北海道へと競技会場を移すことを決定しました。
オリンピックの中止の決定権も当然ながらIOCにしかありません。
IOCが「開催」と”決定”したのにも関わらず、日本側で”勝手に”「中止」にしてしまえば契約不履行になってしまうよね?というのが今回の噂のはじまりでしょう。
実際はどうでしょうか?
五輪中止の違約金はない?
5月13日の記事によりますと、東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(77)が取材に応じ、
「最近、そういう質問が増えているが考えたことはない。あるのかどうなのかも見当がつかない。そもそも(IOCから)そんなことを言い出す人がいるのかも私には予想がつかない」
出典:https://www.nikkansports.com/sports/news/202105130001054.html
と発言しています。
巷で噂になっているような
「オリンピック中止」したら「違約金」という内容がIOCと交わした開催都市契約には記載がないとのことです。
また今回仮に東京オリンピックが中止になるとして、その理由は明らかに新型コロナウイルスの世界的パンデミックが原因です。世界的な異常事態が理由なのにも関わらず勝手に中止したら違約金を払えという暴論は世界的にも認められないだろうというのも事実だと思います。
もしそうなら中国に請求してもらいたいものですね。
では違約金はないのでしょうか?
違約金の正体?
ではオリンピックを中止したら違約金の噂は嘘なのでしょうか?
日のないところに煙は立たないと言いますよね?
調べていくと興味深い記事がありました。
上記で武藤事務総長の発言が掲載されていた日刊スポーツの記事にも書かれていましたが、
中止になった場合、組織委予算に含まれるIOC負担金の850億円は返還する義務があるのかとの問いには「そのような話を(IOCと)したことがないので答えられない」と、現時点でそのような取り決めがないことを明かした。
引用:https://www.nikkansports.com/sports/news/202105130001054.html
と話しています。
つまり組織委には、IOCが放映権料で得た収益の一部を拠出しています。その額が約850億円と言われています。
これはオリンピック憲章にかかれているIOCの役割の一つです。
- 2- IOCはテレビ放送権の活用から得た収入の一部を、国際競技連盟(IF)や国内オリンピック委員会(NOC)、オリンピック・ソリダリティーおよびオリンピック組織委員会(OCOG)等に与えることができる。
出典:https://www.joc.or.jp/olympism/charter/chapter2/26_28.html
オリンピック中止となればそのお金を返還しなければならないのではないか?ということですね。
しかしこのことも開催都市契約には記載がありませんということです。
しかし!
別の記事には不穏なことが書かれていました。
「違約金」と「放映権」の意外な関係!?
朝日新聞の記事ですが、
また、東京との関係では、IOCは大会組織委員会に850億円の拠出金を支払っている。しかし、大会が中止となって放映権者が放映権料の返還を求めた場合、組織委は拠出金をIOCに払い戻さなければならない契約になっている。大会が中止になった場合、IOCだけでなく、組織委や東京都も大きな減収に直面する可能性がある。
出典:https://www.asahi.com/articles/ASP5B4VPFP5BUTQP00Q.html
と書かれています!
そうなんです!「オリンピックを中止したら」ではなく、なんと「放映権料の返還を求めたら」組織委に拠出されていた約850億円をIOCに返還するという”契約”になっているというのです!
ワンクッションおいているわけですね。
これでは「違約金」とは言えませんよね?
放映権者とは、日本では「電通」になると思います。
電通はIOCからアジア22カ国・地域の放映権を2015年に取得しています。
(念の為、電通のHPをウェブ魚拓で保存したサイトを掲載します。)
その電通が東京オリンピックが中止になったとしてもIOCに対し放映権料の返還を求めなければ約850億円は返さなくて良い。
つまりは「違約金と噂されるもの」は無いということになります。
え〜〜と、ズルくない?
IOCズルくない??
電通はアジア22カ国・地域の放送局からオリンピックの放映権料を取得しています。
香港からは「もし東京オリンピックが中止になったら電通に放映権料の払い戻しを受ける」と言われています。
そうしたら電通としてもIOCに放映権料の返還を求めたくなりますよね?
でも返還を求めれば(何故か関係のない)組織委に拠出していた約850億円をIOCに返還するという契約があるというのです!
(まぁ電通と組織委の間柄は・・ねぇ?)
これだと確かに「違約金」とは呼べませんが、多額のお金をIOCに返還する形になりますよね。
- 電通が放映権料の返還をIOCに求めなければ、先払いでIOCが受け取っていた放映権料は丸儲け
- 電通が放映権料の返還を求めれば、組織委に拠出していた約850億円が戻る
どちらにしてもIOCが得することになりますね。
まとめ
違約金が有るか無いかというと、
- 東京オリンピックを日本側から中止したとしても「違約金」は無い。
(開催都市契約に違約金という項目が無いから) - 大会が中止となって放映権者が放映権料の返還を求めた場合、組織委は拠出金をIOCに払い戻さなければならない契約になっている。
ということで、「違約金」は無いけども、条件(電通がIOCに放映権料の返還を求めた場合)により多額のお金をIOCに返さないとダメだということです。
IOC側は表現方法や条件をワンクッション入れて誤魔化していますが、中止の場合はどちらにしてもIOCが得するようになっている可能性が高くなりました。
「開催国側で中止にしたら違約金を払え」なんて契約をしたら、各国から非難轟々でしょう。
だから表現を変えて、「IOCに放映権の返還を求めるなら、予め組織委に拠出していたお金を返してね?」という搦手できています。
このようなことがあるのでワシントン・ポストなどでIOCが非難され始めているのでしょう。
「違約金は無い」
だが、IOCはタダでは転ばない!
ということでしょうか。